魔の手

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魁斗が呆気にとられた顔で俺を見た。 俺の口から出たまさかの返事に。 「えっ…と? 潤、もっかい言ってみ?」 「二度も言うか! もう行く。また明日な。」 慌てる魁斗を置き去りに、俺はそそくさと教室を出た。 ───尚翔の教室に着くと、そこにはまだ何人か残っていた。 その中に尚翔もいて、俺は内心安堵した。 俺の姿を見て、それまで談笑していた奴らが一瞬にして静かになる。 視線が突き刺さる。 好奇と恐怖の混じったそれらには慣れているから、普通にスルー。 俺はまっすぐに尚翔を見据えて言った。 「尚翔。行くぞ。」 その瞬間、俺に注がれていた視線が一斉に尚翔の方へ移る。 尚翔はおずおずと席を立ち、俺の元に歩いてきた。 「お……お疲れ様、です…」 「…ん。」 無意識だろうが、上目遣いで見上げてくる尚翔。 …反則だと思った。 不覚にも可愛いと思ってしまった自分もキモい。
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