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「なんか……ごめんなさい。」
廊下を並んで歩いていると、唐突に尚翔が謝ってきた。
謝られる理由がわからず、俺は隣を歩く尚翔を見下ろした。
「なんで謝る?」
「先輩の貴重な時間を割いてまでおれを迎えに来てくれるだけでも申し訳ないのに……さっきみたいに周りからジロジロ見られて、すごく不愉快なんじゃないかな、って……」
どんどん声が小さくなっていく尚翔。
今まであれだけ…こっちがどれだけ突き放しても纏わり付いてきたくせに、逆にこっちが気を許すと急に殊勝な態度になる。
わからねぇ奴…
「…確かにな。ジロジロ見られんのはいい気分じゃねぇ。」
「!」
くしゃり、と。
俺は尚翔の頭を撫でた。
「俺がしたくてしてることだ。お前がいちいち気に病む必要ねぇよ。」
「………」
「言っただろ、心配だって。………何度も言わせんな。」
「…ん…」
柄にも無いことをこれ以上言いたくなくて、少しだけ語調を強めると、尚翔は僅かに頷いた。
…ただ心配なだけじゃない。
好きだから…
好きな奴を危ない目に遭わせたくないと思うのは当たり前のことだ。
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