562人が本棚に入れています
本棚に追加
「先輩、おはよ。」
「…おう。」
翌朝。
校門でばったり遭遇。
登校する時は他の生徒も同じ時間帯に登校してくるから、俺は一緒ではない。
尚翔曰く、『流石に周りに人がいる中で危害は加えてこないし、何より潤先輩にそこまでしてもらうのは悪い』だそうだ。
そうなんだろうけど。
俺としてはやはり心配なワケで。
だからいつもより早めに家を出て、校門の前で待機。
…ん? もしかしなくてもストーカーと変わらないんじゃねぇか?コレ。
「先輩、こんなとこでどうしたの? 誰かと待ち合わせ?」
「……あー……」
そんな俺の思惑を知る由も無い尚翔は、不思議そうに訊いてきた。
じわじわと羞恥が込み上げる。
「先輩…?」
純粋無垢、という熟語がぴったりの尚翔の双眸が、まっすぐに俺を捉えてくる。
ここで言わせようってか…
ああクソ、コイツに惚れたばっかりに、柄にも無いことをしてしまう自分を呪いたい。
「………お前を待ってた。」
ぼそりと呟くように言うと、尚翔が目を瞠るのが見えた。
「え…」
「これ以上の質問は無しだ。行くぞ。」
強制的に会話を断ち切り、踵を返した。
『心配だから待ってた』なんて、言えるか。
…本当は素直に言えればいいのだが、生憎あそこで素直になれる程、俺は純粋にはできていない。
最初のコメントを投稿しよう!