理由が無くても守れる権利

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「あの邪魔な不良もここには来ない。僕たちの邪魔をする奴はいないんだ。」 「っ………」 身動きが取れないでいると、朔原先輩はあっという間に距離を詰め、おれの腕を掴んだ。 そして教室の奥まで無理矢理おれを引っ張っていく。 「僕ね…映画とかでよく見る、動物をホルマリン漬けにするマッドサイエンティストの気持ちがよくわかるんだ。誰にも渡したくないと思う物を、逃げられないように閉じ込める………ずっと自分の傍に置いて、見つめていられるんだから。」 生物室の奥の棚に陳列された生物のホルマリン漬けを見つめながら語る朔原先輩の表情は、恍惚としている。 おれの腕は掴んだまま。 一瞬も緩む隙が無くて、逃げることもできない。 「僕も君を閉じ込めておきたい。この瓶の中の奴らのように。」 「………」 「流石にそれはできないから………せめて、君が僕の物だという印を付けておかなきゃ。」 次の瞬間、視界が反転した。 背中には強い衝撃と鈍い痛み。 目の前には──── 「…尚翔君。」 朔原先輩の顔。 「─────っ!!」 突然、口を何かで塞がれる。 ツーンとした臭い。 「……っ……」 頭が…ぼーっとしてくる。 瞼が重い。 今ここで意識を失うワケにはいかない。 そうしたら、何をされるかわからない。 なのに………抗えない。 ………潤先輩………
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