理由が無くても守れる権利

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「───……」 意識が浮上し、瞼を開く。 まだ頭のふらつきはあるものの、視界は徐々にクリアになっていく。 …そして、身体に違和感。 上半身が妙にスースーする。 「っ!!」 ガバッと上半身を起こそうとして、それがどうしてもできないことに気づいた。 両手が頭上で1つにまとめられ、縛られている。 「…あ、目が覚めた?」 朔原先輩の声。 辺りを見回すと、体育倉庫だった。 おれは分厚いマットの上に寝かされていた。 「何……して…………、ッ…」 朔原先輩はおれの身体の上に跨がり、おれの腹に手を這わせていた。 触られた箇所から沸き上がる嫌悪感に、おれは息を呑んだ。 「尚翔君の肌……触り心地がいいね? 滑らかで、同性とは思えない。」 「や……」 「気持ちいいよ…すごく。」 そう言って朔原先輩は、おれの肌に舌を這わせた。 「ひっ…!」 嫌だ。やめて。 そう言いたいのに、恐怖と嫌悪感で声が出ない。 「っ!? あっ…や…っ!」 朔原先輩の舌が、おれの胸の尖りを滑る。 嫌なのに………気持ち悪くて堪らないのに、意に反して感じてしまう。 思わず漏れた声を勘違いしたのか、朔原先輩は顔を上げておれを見つめ、微笑んだ。 本人は優しく笑いかけているつもりだろうけど、おれには悪魔の笑みにしか見えない。 「気持ちいいんだ? 嬉しい。」 「っ違う…」 「照れてる? 可愛いね、やっぱり。」 更に触れてくる朔原先輩を蹴り飛ばそうともがいたけれど………それがどうしてもできない。 朔原先輩がおれを押さえつける力が異常に強く、おれが暴れてもびくともしない。
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