理由が無くても守れる権利

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へそに。 胸に。 鎖骨に。 首筋に。 ざらりとした感触が伝う。 更に朔原先輩の手が、おれの股間に伸びた。 「ひっ……や、だ…ッ」 スラックスの布越しに触れた手が、いやらしく動く。 全然気持ちよくない。 気持ち悪くて、吐きそうだ。 …悔しくて、目頭が熱くなる。 こんな風に触れられるのを望んだのは、潤先輩だけ。 一生叶わないけれど、優しく触れて、キスしてほしいと願うのは、他の誰でもない潤先輩だけなのに。 こんな卑劣な人間に触られて……もう、潤先輩はおれを傍に置いてくれないだろう。 汚くなったおれを、軽蔑するんだろう。 そう思うと、胸がきりきりと締め付けられて苦しい。 絶望のどん底に一気に突き落とされた気分だ。
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