理由が無くても守れる権利

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「────尚翔っ!!」 空気を引き裂く程の怒声。 おれも朔原先輩も、動きを止めて声がした方───乱暴に開けられた、倉庫の扉の方へ振り向いた。 助かった、と思うと同時に。 更に絶望的な気持ちになった。 「………じゅ…ん…先輩……」 息を切らせ、肩を上下させた潤先輩が、そこに立っていた。 潤先輩は、おれの上に朔原先輩が跨がり、おれの上半身が裸なのを目にするや、怒りに顔を歪めた。 「て…めぇ…何してんだっ!!」 怒声と共に潤先輩が突進してきた。 そして朔原先輩が動く前に、朔原先輩を殴り飛ばした。 一瞬でおれの身体が軽くなる。 潤先輩はおれの前を通り過ぎ、地面に投げ出された朔原先輩の前に立った。 そしてその胸ぐらを掴むと、 「────ッ」 朔原先輩の頬に、拳を叩き込む。 「う"っ…」 倒れこんだ朔原先輩の腹に、今度は蹴りを入れた。 「ごほっ!」 朔原先輩の苦しげな呻き声に、呆然と見つめていたおれはハッと我に返った。
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