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「先輩っ! もうやめてっ! それ以上はっ…」
声の限りに叫ぶ。
すると潤先輩もハッとしたように顔を上げ、おれの方へ振り向いた。
「尚翔っ…」
急いでおれの方へ駆け寄ってくる。
その表情は、さっきまで朔原先輩を殴りつけていた時の形相とは違い、悲痛に歪んでいた。
「何も…されてねぇワケねぇよな。」
「………」
何も言えないおれを潤先輩は暫く見つめた後、包み込むようにおれの身体を抱き締めた。
抱き締めてくれるの?
おれは汚いのに。
そんなおれの心中を知ってか知らずか、潤先輩はきつくおれを抱き締めている。
「悪かった。」
絞り出すような声で、何故か先輩が謝った。
どうして先輩が謝るの…
悪いのは朔原先輩と……油断していたおれの方なのに。
先輩は何も悪くないのに。
「遅くなって…すまなかった。」
「っ」
先輩はそっと身体を離し、おれの露になった上半身を凝視した。
眉間に皺を作り、険しい顔つきだ。
居たたまれなくなって、おれは顔をそらす。
「…………………………最後まで……されてねぇか?」
その言葉の意味するところを察し、おれは激しく首を横に振った。
「……そうか…」
潤先輩はふぅ、と息をつくと、地面に捨てられていたおれのシャツを拾い、おれの身体に掛けた。
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