理由が無くても守れる権利

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「それと、何て名前だっけか………高田とかいう奴も尋問したよ。たまたま君に頼まれたこと、他の奴に喋ってたの聞いたから、呼び止めて。君に頼まれて、尚翔クンを連れだしたって吐いてくれたよ。」 「…俺も他の奴が、テメェがここの鍵を持ち出したのを見たっつってんの聞いた。」 魁斗先輩に加勢するように、潤先輩もそう言った。 “高田”… そういえばおれを呼び出した人、朔原先輩に“高田”と呼ばれていた。 …潤先輩も魁斗先輩も、本当に偶然、朔原先輩の同級生の話を耳に挟んだだけだった。 その偶然のおかげで、おれは居場所を突き止めてもらえた。 もし、2人とも聞いていなかったらと思うと………考えたくもない。 「つーかさ、潤はとっくの昔から問題児扱いされてるし、今更騒ぎ起こしたところで何にもなんねーだろ。」 「オイ!」 あっけらかんと話す魁斗先輩に、突っ込む潤先輩。 「逆に君の周りからの評価がガタ落ちでしょーよ。君が過去にやらかしたこと、知ってる奴がいるんだし。君の親だって流石に庇いきれねーんじゃねーの? それに………」 魁斗先輩が、おれを一瞥した。 「尚翔クンも傷つくことになる。」 その言葉に、朔原先輩の表情が苦しげに歪む。 おれを守るように立っている潤先輩は、服の裾を掴むおれの手を握った。
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