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潤先輩の気持ちはわからないけれど。
おれを安心させようとそうしてくれているのは、伝わってきた。
だからだと思う。
はっきりとした根拠は無いのに、不思議ともう大丈夫だという安堵が、おれの口を開かせた。
「………朔原先輩…あなたの言ったこと、全部間違ってます。」
「!」
「おれは潤先輩に脅されてなんかいない。おれが一方的にこの人を好きで、無理言って傍にいるだけ。例えこんな…さっきみたいな乱暴をされてもされなくても、おれはこの人を選びます。」
その時、僅かに潤先輩の手に力がこめられるのを感じた。
何度突き放されても。
想いが実らなくても。
おれが取りたいと思うのは、この大きくて力強い手だ。
「さっき僕を…コイツの暴力から救ってくれたじゃないか…!」
「あなたのせいで、潤先輩が暴行事件の犯人になるのが嫌だったんです。あなたを助ける為じゃない。」
「尚翔君…!」
「潤先輩じゃなければ………正直、あなたが誰に殴られようと知ったことじゃない。むしろ殴られただけで済んだと、思ってください。」
自分でも驚く程冷たい言葉。声。
潤先輩や魁斗先輩にはあまり聞かせたくなかったけど………ここまで言わないと、朔原先輩は懲りもせずおれに付きまとうかもしれない。
「…そういうことだ。金輪際、尚翔に近づくな。次こそ…無いと思え。」
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