562人が本棚に入れています
本棚に追加
* * * * *
シャワーの音が静かに漏れてくるのを、俺は無言で聞いていた。
シャワーを浴びているのは、尚翔。
あれから俺は、まだ学校が終わっていないにも拘わらず、まっすぐに帰宅した。
尚翔も、伴って。
一刻も早くあの場から立ち去りたかった。
尚翔をあの場に居させたくなかった。
俺と尚翔が2人きりになれる場所に行きたかった。
「潤先輩…あの…」
「シャワー。浴びてこい。」
「………はい…」
俺がピリッとした雰囲気を醸し出しているのを感じた尚翔は、素直に言うことを聞いた。
そして今に至る。
…イライラする。
俺以外の奴が尚翔に触れたことも。
あれだけ言ったのに警戒心を持たなかった尚翔にも。
…結局、完全に尚翔を守れなかった自分にも。
あの朔原とかいう男が尚翔に跨がっているのを見た瞬間、血の気が引いた。
そして尚翔の上半身が裸なのを見て、一瞬にして頭に血が昇り、沸騰したようになって。
身体が勝手に動いていた。
気がついたらアイツを殴り飛ばし、蹴りつけていた。
尚翔が止めなければ、それこそ顔の原型を留めないくらい痛めつけていたかもしれない。
…それでもよかった。
尚翔の言った通り、殴られただけで済んだのだから、アイツはまだ運が良い。
最初のコメントを投稿しよう!