理由が無くても守れる権利

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尚翔がシャワーを浴びに行って、30分は経っただろうか。 …長い。 時間をチェックしていたワケではないが、妙に長くかかっている気がする。 そう思い始めた時、シャワー音が止んだ。 浴室の戸を開ける音、衣擦れの音が聞こえてくる。 少し、ホッとした。 「…あの…先輩…シャワー、ありがとう。」 「…ん。」 恐る恐るといった様子で、俺が待つリビングに入ってきた。 事前に渡しておいた俺の服を身に付けているが、予想した通り、だほだぼ。 サイズが全く合っていない。 …可愛い。 こんな時でさえそう思ってしまう自分。 「…こっち来い。」 リビングの端にあるパイプベッドを背もたれ代わりにして床に座る俺の隣を示してやる。 尚翔は小さく頷き、俺の隣に座った。 「…良かった。取り返しのつかなくなる前に、お前を見つけられて。」 「…ありがとう…」 正直何から話せば良いかわからない。 やっとの思いで出た言葉がソレだった。 俺はずっと気になっていたことを訊ねた。 「今朝お前が俺に言ったこと…覚えてるか?」 「うん…」 「あれはどういう意味だ。」 俺の問いに、尚翔は躊躇した様子を見せたが、ここで引き下がる俺じゃない。 「尚翔、答えろ。」 「………」 「俺は…お前の気持ちが聞きたい。」 そう告げると、尚翔は少しだけ悲しそうな顔をした。 「…潤先輩に、嫌われるのが怖くて…」 「俺に?」 俺に嫌われる…? その発想がなかった俺は、虚を突かれてまじまじと尚翔を見た。
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