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顔を赤くして恥ずかしそうにそう言う尚翔。
それがひどくいじらしく見えて、ますます鼓動が速まる。
「でも、おれ………そういう経験無いから………先輩をがっかりさせるかもしれない………」
…それを聞いて、柄にも無く嬉しいと思う自分がいる。
コイツの“初めて”が俺だという事実が、こんなにも嬉しいなんて。
「先輩は慣れてるだろうし………でもおれ、頑張るから……」
「………」
頑張るって何を…
と、突っ込みたくなる。
けれどそれすら可愛いと思ってしまうくらい、俺はコイツにやられている。
「…確かにな。そういう経験が無いワケじゃねぇ。」
「………」
「俺が今まで相手にしてきたのは、どうでもいい奴ばかりで…多分、セフレとしても認識してなかったかもしんねぇな。」
俺が静かにそう話すと、尚翔の双眸が不安げに揺れた。
その頬に触れ、慈しむように撫でる。
「だから………そういう意味じゃ、俺も今日が初めてだ。好きな奴を………、
恋人を抱くのは。」
「!」
目を瞠る尚翔を腕の中に閉じ込める。
その頬に、額に───唇に、キスを落とす。
「お前も…俺だけ知っていればいい。」
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