理由が無くても守れる権利

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────目を覚ますと、隣に尚翔は居なかった。 「尚翔…?」 上体を起こして見回すも、求める姿は無い。 何処へ行った…? 目が覚めたら居ないなんて、俺は夢でも見てたのか? いやまさかな。 …そう思っていると、リビングのドアが開いて尚翔が現れた。 「……あ…先輩。」 尚翔は学校の制服を着ていて、髪は少し濡れている。 「ごめんなさい……シャワー、借りちゃった。」 「…別にいい。」 尚翔は俺の傍まで来ると、ベッドの端の俺の足元に腰掛けた。 その手に、そっと触れてやる。 「…夢じゃ、ないんだよね。」 「何が。」 「先輩に好きって言われて、抱いてもらえて……ずっと叶わないと思ってたことが本当に叶うなんて思わなかったから、もしかしたら夢なんじゃないかって、今でも信じられないんだ…」 自信無げにそう話す尚翔がいじらしくて、俺は尚翔の手を握った。 顔を上げて俺を見る尚翔の瞳は不安げに揺れていたが、むしろ綺麗だと思った。
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