過去の女

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尚翔は今授業中。 昼休みになれば会える。 …って、俺は乙女か。 その時、ピロン、という音がして、俺のスマホにメッセージが届いたことを告げてきた。 「!」 尚翔からだ。 液晶に現れた通知の名前を見ただけで、心臓が少しだけ速くなる。 《先輩、今屋上にいますか?》 唐突に送られてきたメッセージを怪訝に思いつつも、俺はメッセージを返した。 《そうだけど。どうした?》 《おれ今、自習中で……先輩が今何してるかなって、気になっただけ。》 「………」 …なんか。 やばい。 何がやばいって、顔が、 …にやける。 好きになってから、なんかもう色々とフィルターがかかってしまったかのように、アイツの言動1つ1つが可愛く思えてしまう。 この何気ないやり取りも、如何にも“恋人”という感じがして。 甘くて。 「お? どした? 尚翔クンか?」 「…っ!」 いつの間にか魁斗が俺のすぐ真横に来ていた。 俺のスマホを覗きこもうとしてくるから、俺は急いでスマホを隠した。 「なーんだよ、どうせ愛しの尚翔クンからだろ? 隠さなくても、そんなにやにやしてたらモロバレだって。」 「……っ、うるせぇ!」 こうやってからかわれるから、魁斗には知られたくなかったんだよ。 これ以上からかわれるのが癪で、俺は飲み物を買いに行くという口実で屋上を後にした。
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