過去の女

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「……あ。」 「!」 この学校に1ヶ所しかない、渡り廊下の自販機。 そこには、ついさっきまで思い描いていた人物がいた。 「潤先輩。」 尚翔が、自販機で何か買っていた。 現れた俺を見るや、ふにゃりとその顔を綻ばせた。 何なんだ、この……… 可愛い生き物は。 「…そういや自習っつってたな。」 「うん。でも実際に自習してるの、半数くらいだけど。」 「お前もサボりか?」 「へへ…でも、途中までは真面目に自習してたよ?」 「へぇ…」 自販機の1つに凭れかかり、尚翔がジュースを買うのを見つめる。 約束したワケでもないのに、こうして会えるなんて… 実は内心浮かれてしまっているのを悟られないようにするだけで必死だった。 「…あの…それじゃ、また…」 ジュースを買い終えた尚翔が、教室に戻ろうとする。 「─────えっ…」 それをさせまいと、俺はほぼ反射的に尚翔の手首を掴んでいた。
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