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漸く潤先輩の恋人になれて、すごく幸せだった。
その幸せから、たった一日で、一転。
一気にドン底に突き落とされた気分。
『あれぇ~、潤じゃ~ん。』
あの女の人の甲高い声が未だに耳の奥にこびりついている。
潤先輩が一時期荒れていたことは知っていたし、多分それなりに……肉体関係を持っていた人はいるんだろうなー……とは思っていた。
でもそれはあくまでおれの想像だった。
もしかしたら、実際には硬派な方だったんじゃないか────なんて、勝手な期待を寄せていたのだけど。
やっぱり、期待はただの期待に過ぎなかったのだと。
その女の人を見て、痛感した。
『抱いた女の顔なんか、いちいち覚えてない?』
その言葉が、先輩が何人もの人と関係を持ったという事実を突き付けた。
最初は、嘘であってほしいと儚い願望を抱いたけれど、先輩が自ら認めたことで、それは見事に打ち砕かれた。
先輩にそういう過去があることを、全く考えなかったワケじゃないけれど。
…やっぱり、ショックだ。
「……………ハア…………」
昨日から溜め息ばかり出る。
先輩を責めたいワケじゃない。
過去に起きたことを責めたところで、過去は変えられない。
だからと言って、別れたくもない。
先輩を嫌いにもなれない。
………じゃあ……先輩は?
おれを好きだと言ってくれたけれど、いずれは昨日の女の人みたいに、おれも捨てられるのかな?
捨てられた後は………顔すら忘れ去られるのかな?
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