562人が本棚に入れています
本棚に追加
/211ページ
《放課後、帰る時に。》
放課後、と言ったのは、心の準備がしたかったから。
本当に準備できるかわからないけど。
事が起きたのは、その日の体育の授業中。
今日も陸上の授業。
内容は、走り幅跳び。
「───うわあっ」
元々運動は得意じゃないおれは、2回跳んで2回とも無様に着地した。
「西崎~、大丈夫かよ。」
「ほんと運動音痴だよなー」
「あはは…」
クラスメイトが笑いながら、尻餅をついたおれに手を差し伸べてくる。
立ち上がってお尻に付いた砂を払い落としながら、ふと校舎に目を向けた。
───……先輩、おれのこと見てるのかな…
以前、先輩の居る教室から、グラウンドを一望できると聞いたことがある。
そして、おれの体育の授業の様子も見えていると。
でもここからじゃ、おれからは見えない。
それでも、先輩はおれを見てくれているという事が、嬉しい。
あんなに好きだった人が、あんな遠くからですらおれの姿を見つけてくれる。
…やっぱり、先輩と別れるなんて無理だ。
先輩の過去に何があってもいい。
おれが先輩を好きなことには変わりないから。
「───────危ないっっ!!」
「え──────」
突然聞こえた叫び声に振り向くと。
そこでおれの意識は途絶えた。
最初のコメントを投稿しよう!