過去の女

13/17

562人が本棚に入れています
本棚に追加
/211ページ
《放課後、帰る時に。》 放課後、と言ったのは、心の準備がしたかったから。 本当に準備できるかわからないけど。 事が起きたのは、その日の体育の授業中。 今日も陸上の授業。 内容は、走り幅跳び。 「───うわあっ」 元々運動は得意じゃないおれは、2回跳んで2回とも無様に着地した。 「西崎~、大丈夫かよ。」 「ほんと運動音痴だよなー」 「あはは…」 クラスメイトが笑いながら、尻餅をついたおれに手を差し伸べてくる。 立ち上がってお尻に付いた砂を払い落としながら、ふと校舎に目を向けた。 ───……先輩、おれのこと見てるのかな… 以前、先輩の居る教室から、グラウンドを一望できると聞いたことがある。 そして、おれの体育の授業の様子も見えていると。 でもここからじゃ、おれからは見えない。 それでも、先輩はおれを見てくれているという事が、嬉しい。 あんなに好きだった人が、あんな遠くからですらおれの姿を見つけてくれる。 …やっぱり、先輩と別れるなんて無理だ。 先輩の過去に何があってもいい。 おれが先輩を好きなことには変わりないから。 「───────危ないっっ!!」 「え──────」 突然聞こえた叫び声に振り向くと。 そこでおれの意識は途絶えた。
/211ページ

最初のコメントを投稿しよう!

562人が本棚に入れています
本棚に追加