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スゥッと意識が浮上する。
ゆっくりと瞼を開くと、眩しい光に一瞬怯んだ。
そして視界に飛び込んできた白色。
身体が、何かに包まれているような感覚。
視線を横に移すと、白いカーテンが引かれていた。
いつの間にか、保健室のベッドに寝かされていた。
おれ、体育で外に居た筈だけど…
頭を動かすと、
「いたっ…」
鈍い痛みがこめかみに走り、おれは小さく悲鳴を上げた。
───すると。
「尚翔? …気がついたのか?」
大好きな声がすぐ近くで聞こえた。
潤先輩が、おれが寝ているベッドの傍に座っていた。
おれの左手を握っている。
…どうして先輩がここに…?
「お前のクラスが外で体育やってるのを見てた。そしたら、お前の頭にボールが当たってお前が倒れた。」
「あ…」
そっか、ボールが当たったのか。
さっきから感じる頭の痛みはそれが原因だとわかった。
「覚えてねぇのか?」
「ん…多分、一瞬のことだったから。」
「…すげぇ焦った。お前が倒れて、運ばれてったから。」
「それで、来てくれたの…?」
「ああ。」
おれの手を握る先輩の手に、僅かに力が込められる。
先輩はおれの手を持ち上げると、優しく唇を寄せた。
「心配した。」
…どうしよう。
その一言で、胸がいっぱいになる。
やっぱりおれは…この人のことが好きで堪らない。
離れるなんて考えられない。
先輩が過去に何人もの女の人と関係を持ったからと言って、先輩の今がそうじゃないことは知ってる。
先輩の今の気持ちを信じたい。
「尚翔…悪かった。」
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