過去の女

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* * * * * ベッドに横たわったままの尚翔が、目をそらすことなく俺を見つめている。 けれどその双眸は揺れている。 無意識なのか、何かに耐えるように下唇を噛んで。 「最初は、なんだコイツって思った。俺のことを何も知らねぇ奴が俺のことを好きだとかぬかして、しつこく付き纏ってきて、しかも男ときた。俺は毎日生きるのに必死で、誰のことも信用してねぇのに、何の苦労も無く温室でぬくぬくと育てられてきたコイツに、何がわかるって…」 今、思えば。 俺は羨ましかったのかもしれない。 愛されて育ってきた尚翔が。 俺と関わっても周囲から疎外されること無く、友人と過ごせる尚翔が。 あの日────今となっては顔も覚えていない不良を叩きのめした日、両親だけでも俺を信じてくれていれば、何か違っていたかもしれない。 そんな思いが根底にあったからこそ、余計に尚翔を突き放したのかもしれない。 多分、本当は。 俺自身を愛してくれる存在が欲しかった。 「いつの間にか…………尚翔を手放せなくなってた。」 尚翔が傍に居るのが当たり前になっていた。 他の人間と楽しそうにしているのを見て、1人モヤモヤして。 「本当に初めてだった。誰か1人に、こんなにも傍に居て欲しいと思ったのは。誰にも渡したくないと思ったのは。」 「先輩…」 「頼む、尚翔………俺から、離れていくな。」
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