過去の女

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本当、情けない。 喧嘩なら負け無しの俺が。 “狂気の高藤”とまで呼ばれ恐れられるこの俺が。 たった1人に、執着するなんて。 …でも、好きだ。 どうしようもなく。 「傍に居てくれ…」 その時、尚翔がゆっくりと上体を起こした。 ボールが当たった痛みなのか、僅かに顔をしかめている。 「! 尚翔、無理して起き上がるな。」 「いい…大丈夫。」 ほぼ同じ高さになった目線。 尚翔は、微笑んでいた。 その瞳に、涙を溜めて。 「よかった………先輩の中に、おれが強く存在できていて。」 「尚翔…」 「おれも不安だった。いつかおれも、過去の女の人たちみたいに、捨てられるんじゃないかって。」 「あるワケねぇだろ…!」 「うん。今のを聞いて………先輩の気持ちを聞けて、確信した。おれ、やっぱり先輩が好きで、離れられないって。」 尚翔はそう言って、俺の胸にしがみついた。 それが嬉しくて………俺は尚翔の細い身体を抱きしめた。 溢れたのは、心からの安堵。 そして、尚翔への愛しさ。 尚翔以上に好きになる奴はいない。 そんな奴を作るつもりも無い。 「尚翔…好きだ。」 「うん、おれも。」 「好きだ………愛してる。」 「おれも…っ」 それから暫く、俺は尚翔への想いを吐露しながら、その温もりを感じていた。
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