562人が本棚に入れています
本棚に追加
/211ページ
本当、情けない。
喧嘩なら負け無しの俺が。
“狂気の高藤”とまで呼ばれ恐れられるこの俺が。
たった1人に、執着するなんて。
…でも、好きだ。
どうしようもなく。
「傍に居てくれ…」
その時、尚翔がゆっくりと上体を起こした。
ボールが当たった痛みなのか、僅かに顔をしかめている。
「! 尚翔、無理して起き上がるな。」
「いい…大丈夫。」
ほぼ同じ高さになった目線。
尚翔は、微笑んでいた。
その瞳に、涙を溜めて。
「よかった………先輩の中に、おれが強く存在できていて。」
「尚翔…」
「おれも不安だった。いつかおれも、過去の女の人たちみたいに、捨てられるんじゃないかって。」
「あるワケねぇだろ…!」
「うん。今のを聞いて………先輩の気持ちを聞けて、確信した。おれ、やっぱり先輩が好きで、離れられないって。」
尚翔はそう言って、俺の胸にしがみついた。
それが嬉しくて………俺は尚翔の細い身体を抱きしめた。
溢れたのは、心からの安堵。
そして、尚翔への愛しさ。
尚翔以上に好きになる奴はいない。
そんな奴を作るつもりも無い。
「尚翔…好きだ。」
「うん、おれも。」
「好きだ………愛してる。」
「おれも…っ」
それから暫く、俺は尚翔への想いを吐露しながら、その温もりを感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!