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こうして嬉しそうに俺を見上げる尚翔を見ると、昨日ちゃんと向き合って話をしてよかったと思う。
せっかく恋人になれたのに、一日で破局とか、マジで笑えねぇ…
「潤先輩。」
「ん?」
「…今日も帰りに、先輩のウチに寄っていい?」
「…ああ。」
過去は過去で、受け止めるしかない。
でも、これからは。
隣を歩く、何よりも大切な恋人だけを愛してやれる自信がある。
「でね、先輩、」
「…尚翔。2人の時ぐらい“先輩”呼びやめろ。」
「え……」
「“潤”でいい。ほら、呼んでみろ。」
「でも……」
「尚翔。」
俺の些細な意地悪に、顔を赤らめながら困惑する尚翔。
じっと見つめ、無言で催促する。
「…………………………………潤…」
うっかりすれば聞き逃してしまう程か細い声で、尚翔が俺の名前を口にする。
ああ、もう。
くっそかわ。
「“先輩”呼び、禁止な。」
「そんな………」
「さっさと慣れろ。」
「うぅ………」
そんなささやかなやり取りですら、嬉しいと思う。
────これから、ゆっくりと。
進めていけばいい。
生涯で一度きりの、この恋を。
*Fin*
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