孤独な自分

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きっかけは、ほんの些細なことだった。 俺が暇潰しに立ち寄った店で、一目で気に入った雑貨。 俺はそれを買った。 どうやらそれがいけなかったらしい。 俺が買ったのは、三日月の形の銀細工がついたネックレス。 ファッションにはそこまで頓着しない俺だが、年頃ということもあり、それなりに身だしなみには気を遣っていた。 だから俺が気に入ったそれを身に付ければ、少しは様になるかもしれない。 その時はなんとなくそう思った。 だから買った。 けれどそのネックレスは、既に他の誰かが目をつけていた物だったらしい。 それだけならまだよかった。 その誰かというのが───当時俺が住んでいた地域一帯で幅を効かせていたヤンキーで。 しかもかなりの“厄介者”。 更に運の悪いことに、俺がそれを買った時、ちょうどそのヤンキーとその仲間達も店にいた。 目をつけていたネックレスがなくなっており、そしてそれを俺が買うのを目撃してしまったのだ。 店を出たところで呼び止められ、漫画や学園ドラマよろしく路地裏に連れていかれ、お前が買ったネックレスをよこせと脅された。 今思えば、大人しく渡しておけばよかったのだ。 なのに当時の俺は、どうしてもそれをしたくなかった。 俺が自分の金で買った物を、何故タダでコイツに渡さなきゃならない。
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