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俺の問いに、西崎は再び目を瞠り、それから顔を赤くした。
この反応、マジで恋する乙女って感じだな。
いや乙女じゃないけど。男だけど。
「あの時……助けてもらったから……」
「あの夜のことか? 変な奴に絡まれてんの助けたからか? たったそれだけで?」
「それだけじゃないよ…」
「じゃあ何だよ。」
なんで俺、こんな問い詰めてんだ?
そんなの知ったところで何だっていうんだ?
どうでもいいことじゃないか?
なのに…知りたいと思っている自分がいる。
「周りの人は、誰かが誰かに絡まれてても、皆見ないフリするでしょ? 自分に矛先が向かないように。…でも、先輩は違ったから。おれなんか助けても、何の得にもならないのに、先輩は助けてくれたから。強くて、かっこよくて、本当は優しい人だってわかったから…好きになったんだ。」
迷いなくまっすぐ向けられた瞳が、いやに眩しく感じる。
俺は逃げるように目をそらした。
「強くもかっこよくも、優しくもねぇよ。俺は…喧嘩ばっかしてる不良だぞ。売られた喧嘩は片っ端から駆って、気が済むまで殴り倒す最低な男だ。お前は、俺を美化しすぎだ。俺はお前が思ってるような人間じゃねぇんだよ。」
「でも先輩は、自分から喧嘩を売ることはしないでしょう? 本当は…殴りたくないんでしょう?」
「てめぇに何がわかるっ!」
気がつけば、叫んでいた。
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