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この不良共もそうだが、さっきからこっちをチラチラと見ている通行人や店の店員も煩わしい。
…ったく、こんな所で喧嘩売りやがって。
せめて場所ぐらい移動させろってんだ。
届くことのない悪態を内心で吐きながら、ひとまずその場を後にした。
「…先輩、先輩っ」
暫く歩いていると、それまで黙っていた西崎が声をかけてきた。
「…何。
っ!?」
西崎は突然俺の目の前に立つと、ひんやりする何かを俺の口端に当てた。
同時に、ピリッとした小さな痛みがそこに走る。
「っ……何してんだ!」
驚くあまり、西崎の手を払いのけた。
が、西崎は尚も俺の顔に手を伸ばし、何かを当ててくる。
それが、ウェットティッシュだと気づくのに数秒は要した。
「ここ、怪我してる。せめて血を拭いて清潔にしないと…」
「こんなん別にどうってこと…」
否定しようとする俺に対し、西崎は首を横に振った。
たかが小さな怪我(僅かに出血はしていたが)を、真剣な顔で応急手当してくる西崎。
俺より身体が小さいくせに、その妙な気迫に何故か俺が気後れしてしまい、されるがままになっている。
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