562人が本棚に入れています
本棚に追加
「潤、屋上行かねーの?」
次の日。
珍しく屋上には行かず教室に留まっている俺に、魁斗は不思議そうに訊いてきた。
「…ああ。」
「尚翔クンと何かあった?」
「………」
質問に答えない俺に、魁斗は図星だと察したらしい。
ニヤニヤと笑いだした。
「そうかぁ~~~」
「何だよ気持ち悪ィな。」
「いやぁ? 西崎と何かがあって気まずいから屋上行けねーんだろ?」
「っ! そんなんじゃねぇよ…」
否定はしたものの。
図星だった。
昨日、何故か西崎に対してイライラして、何とも気まずい別れ方をした。
以前の俺なら、どうでもよく感じていた。
なのに何故か、屋上に行けばアイツと遭遇することを恐れて行けずにいる。
なんてザマだよ。
「いやーでも潤も成長したね。」
「あ? 何言ってんだ。」
「だって尚翔クンと喧嘩しただけで怖くて会いに行けないとか、前の潤なら有り得ねーじゃん。」
「だからそんなんじゃねぇっつってんだろっ」
魁斗の言っていることは嘘じゃない。
けどそれを認めたくない。
鬱陶しいだけの他人に振り回されている自分を、どうしても認めたくない。
俺が語気を荒げたことで、それまで騒がしかった教室の中が一瞬静かになった。
怯えたような視線、蔑む視線が俺に集中するのがわかる。
最初のコメントを投稿しよう!