第1章

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『すみません、遅くなりました。』 小走りに店に入ると店長と目が会った。 『あら、小滝くん。珍しく遅かったわね。』 『すみません。』 『いいのよ、小滝くんはいつも真面なんだし。それに講義が長引いたんでしょ。って言ったってまだシフト時間前なんだし。』 『すぐ、着替えてきます。』 そう言ってスタッフルームへと急いだ。 荷物をロッカーに入れ、すぐに着替える。 仕事着に着替えると気も引き締まる気がした。 『よし。』 小さく息を吐いて店に出た。 『小滝くんこれ、並べといて。私レジ行くから。』 『はい。』 店長にパンのケースを渡され、並べようとした。 すると慌ただしく入ってくる人にぶつかってしまった。 『あっ、失礼いたしました。』 『きゃっ、て小滝くんじゃん!もう!』 『泉さん』 『ちょ、どいてどいて!また遅くなっちゃった!店長に怒られちゃう~!』 と彼女はバタバタとスタッフルームへ入って行った。 彼女は同い年でバイト仲間だった。大学は違うが同い年と言うこともありシフトが同じ時が多い。 『ふぅ~怒られるとこだった! よかった店長レジ中で』 『また彼氏ですか?』 『彼氏とはもう別れたって言ったでしょ?女友達とカラオケ行って盛り上がっちゃって~なかなか抜け出せにくくてさ~』 『だからって遅刻の言い訳にはならない!』 『げっ、て、店長~!聴いちゃってました?』 『聴いちゃうも何も遅れないでくること!何度目だ!やめさせたっていいんだよ?責任を持ちなさい』 『はい…スミマセンでした。』 『わかったらさっさと品出して』 『はーい』 店長が再びレジに戻るのと同時に泉はペロッと舌を出して 『また怒られちゃった』 と首をすくめた。 あまり反省の色はないようだ。
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