第1章

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桜が舞っていた。 大学からの道のりは桜の木がたっている。 1人、小さなキャンパスバッグを持って歩いていた。 信号が赤になる。ぼーっと空を見上げた。 桜の花びらが水色の空に舞い上がり風とともに流れていく。 ただぼうっと見ていた。 大学の入学式から一週間たった。 少しずつ大学に慣れてきた。 大学は嫌じゃない、むしろ国公立の第一志望の大学に入れて嬉しかった。講義は集中できている。友達だってまあまあできた。 だけど… ぽっかりと心に空いた穴は2年も前のまま。 何をどうしてもその穴が埋まることはなかった。 信号が青になる。気づかなくて後ろの人がぶつかって気づいた。 あわてて横断歩道を渡った。 『もう2年になるのか…。』 ぽつんと吐いた独り言が町に浮いて消えてゆく。 ははっ、情けなくて笑えてくる。 いつまでこんなこと考えてるのだろう。 公園の時計が目に付く。 いけない、と思い道を急いだ。
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