29人が本棚に入れています
本棚に追加
琴音は箸で、素麺を具材と一緒に掬うと、麺汁につけて頬張る。
――美味しい!
うちでいつも母親が作ってくれる、味もそっけもない、ただの素麺しか食べたことがなかったから、琴音は生まれて初めて、素麺を美味しいと思った。
「美味しい~~~~」
「あら、そんなに大袈裟に喜んでくれなくても良いのに」
奈緒の母が微笑む。
「何かわざとらしいよ琴音」
奈緒が呆れたように言った。
ちょっとオーバーと取られたかもしれないが、実際に美味しいのだから仕方がない。
「だってうちの素麺てさぁ、何にも具がなくて、ただ素麺だけなんだもん。だから本当に美味しくて」
「えっ、そうなの?」
奈緒が驚いて目を丸くしたとき、インターホンが鳴って、菜津が到着した。
最初のコメントを投稿しよう!