夏休み

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琴音は箸で、素麺を具材と一緒に掬うと、麺汁につけて頬張る。 ――美味しい! うちでいつも母親が作ってくれる、味もそっけもない、ただの素麺しか食べたことがなかったから、琴音は生まれて初めて、素麺を美味しいと思った。 「美味しい~~~~」 「あら、そんなに大袈裟に喜んでくれなくても良いのに」 奈緒の母が微笑む。 「何かわざとらしいよ琴音」 奈緒が呆れたように言った。 ちょっとオーバーと取られたかもしれないが、実際に美味しいのだから仕方がない。 「だってうちの素麺てさぁ、何にも具がなくて、ただ素麺だけなんだもん。だから本当に美味しくて」 「えっ、そうなの?」 奈緒が驚いて目を丸くしたとき、インターホンが鳴って、菜津が到着した。
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