午後のひととき

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琴音はわざと松本の腕にしがみついて、コテージの受付の方に向かう。 「菜津ぅ~行くよ~」 奈緒が菜津に声をかけた。 「あ、うん。私は釣りはいいや」 菜津が手を上げて答える。 「えっ、何で?」 「みんなのを見てるよ」 「ふ~~~ん。まぁ、いいけど」 「じゃあ部長、二人分お願いしますね」 奈緒が笑顔で松本に微笑んだとき、松本は心の中で危うく三人分おごらされるところだったのかと思った。 入部してきたときから、今谷奈緒のことを狙っているが、常に他の二人と一緒にいるから、今谷奈緒一人だけを誘うのは、非常に難しいのだ。 ましてや、一年生の男子部員は全員が、おそらく今谷が天文部に入ったから、入部してきたのがありありと分かる。 この状況で今谷奈緒とツーショットになるのは、おそらく無理だろうと思っていた。
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