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次の日、少しだけ緊張しながら仕事に行くと、すでに来ていた名草さんが近くに寄ってきた。
「あ、おはようございます。名草さん」
「おはよう、奈緒。えーっと、昨日はごめんな。お前の誕生日なのに気分悪くさせて。昨日の続き、今言っていい?」
和泉と同じ真剣な目。好きと言う気持ちがこれだけで伝わってくる。
俺は覚悟を決めて、頷いた。
「俺さ、本当は、学生の時からお前の事好きだった。けど、あの時は俺もまだ子供だったから。男を好きになるなんておかしいって、自分の気持ちを否定してたんだ。でも、今なら言える。俺、奈緒の事が好きだ」
名草さんの真剣な言葉に俺は思わずありがとう、といってしまいそうになって、慌ててその言葉を飲み込んだ
昨日の和泉の言葉を思い出す。断った方がいい…。でも、名草さんはいつも俺にやさしくしてくれた大切な先輩で、どうしても傷つけたくないという思いが勝ってしまう。
どう答えたらいいのか全然考えがまとまらず黙っていると、名草さんはごめんと言って笑った。
「お前を困らせるつもりはなかったんだ。奈緒の1番が誰かももう分かってるし。ただ思いを伝えたかっただけだから。返事はいつになってもいい。本当のお前の気持ちが分かったら教えて」
頭を撫でられて、震える声ではい、と一言返すと、名草さんは満足したように離れていった。
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