7人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいま、奈緒!!俺と付き合って!!」
どこにでもある普通のマンションの一室。その玄関先で、10年ぶりに再会した幼馴染の第一声は全く持って理解できないものだった。
「おかえり…っていうか、久しぶり和泉。あと意味が分からねぇし、とりあえずごめん」
そう言って、ドアを勢いよく閉める。瞬間に、俺の名前を呼ぶ声を聴きながら俺は、頭を抱えた。
俺、春日奈緒と幼馴染である月野和泉は、小学校からずっと一緒にいる幼馴染だ。俺は、小学校以前の記憶がないから、その時から一緒にいたのか、詳しいことは分からないけど。
でも、和泉とはずっと一緒にいた。小学校も中学校も、家が近いから同じだし、しかも9年間同じクラス。親友よりももっと、家族に近い存在だと思っていた。少なくとも俺は、これからも傍には和泉がいるのだと、そう思っていた。
しかし、10年前。中学3年の卒業式の次の日、和泉は俺の前から突然姿を消した。
『探さなくても大丈夫だから』
この一文だけ書かれた手紙を残して…。
最初のコメントを投稿しよう!