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 扉を開けて一歩中に入った瞬間、扉の陰から男が2人飛び出してきて、あっという間に和泉が捕まった。  和泉を助けに行こうとした時、部屋の奥から1人の男が現れた。  どこかで見覚えがあるような気がして、思い出そうとすると、急に頭が痛くなってそれは叶わなかった。  男は、俺の目の前まで歩み寄ってくると、微笑を浮かべた。 「久しぶりだね…と言っても今も奈緒には俺の事は分からないか。それなら、この場では初めまして、とでもいっておこうか。僕は一ノ瀬愁麻だ。毎年、奈緒に手紙を送っていたのは僕だよ」  この人が、あの手紙を…。でも、なんのために…。 「それは、奈緒に僕の存在を知ってもらいたかったからだよ。差出人不明にしたのは、その方がおもしろくなりそうだったから」 「えっ?声に出してないのに何で…」 「何で、分かるのか?奈緒が考えてる事なんて顔を見れば僕には全部わかるよ。いや、そんなことはどうでもいい。せっかく奈緒から会いに来てくれたのに、ごめんね。この後予定が詰まってて時間がないんだ。だから…早速だけど、これ、見てくれる?」  ポケットから取り出して見せられたのは1枚の写真。  そこには満面の笑みの一ノ瀬さんと思しき子どもと幼い和泉、そして自分とよく似た子供が映っていた。  背景に写っているのは、来る時に見たこの家。  何で、俺がこの家に…。  欠けている幼少期の記憶。この場にいる3人とよく似た子どがが写っている写真。  頭の中で、その2つが繋がり、そして…。 「いっ…なに、これ…。いやだ、嫌だ!!」  忘れていた数々の思い出と、記憶喪失の原因となった事件が頭の中にフラッシュバックして、俺はその場に倒れた。
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