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 手を合わせていただきますと言ってから、カレーを一口食べると、それまで浮かない顔だった和泉が途端に笑顔になった。 「奈緒、これ超美味い!!」 「そりゃ、カフェでコックとして働いてるんだから当たり前だろ」  そう言うと、和泉は楽しそうに笑ってからまたカレーを口に運んだ。 「あ、今日って仕事は?休み?」 「うん。今日はお店の定休日。それから、俺の誕生日…でもあるんだけど覚えてた?」  和泉の顔は見ずに、カレーを食べながらさりげなく聞くと、何故か十秒ほど和泉は黙り込んでいた。  もしかして忘れてたんじゃ…と焦り、顔を上げると和泉は不満そうな顔で俺を見ていた。  自分が想像していたのとは全然違う反応を見せる和泉に戸惑って、俺はおそるおそる「どうしたんだ」と尋ねた。 「覚えてるに決まってるよ。大切な幼馴染の誕生日なんだから。それより、せっかくサプライズでプレゼント渡そうとしたのに、全部台無しじゃんか。奈緒のバーカ」  和泉は変わらず仏頂面で、鞄から、手のひらに収まるサイズの小さな箱を取り出すと、それを笑って俺に差し出した。
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