鏡の存在

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この学校にはとある噂がある。 その名も『見えないはずの鏡』というものだ。 普段あるはずのない所に鏡が現れて、それを見たものは午前1時になると異世界の校舎に連れ去られるというものだが、いかにも学校七不思議にでもありそうな話だった。 しかし、この話はただ連れて行かれて戻ってこられないなどという単純な噂ではなかった…。 「おーい!登城、サッカーしようぜ」 同じクラスになり、初めて仲良くなった男子生徒が俺に話しかけてきた。 「今行くから」 俺は登城 諒太(とうじょう りょうた)。 この春転入してきた高校2年生だ。 馴染めるか不安だった。 だが俺は自分で言うのも恥ずかしいがそれなりに顔は整っており、スタイルも良く明るいためすぐにクラスの雰囲気に慣れて今では沢山の友人に囲まれている。 俺は急いで溜まっていたプリントを鞄に詰め込むと、勢いよく席を立った。 ガシャン その時の弾みで隣の席の机にある筆箱を落としてしまった。 「ごめん!!怪我は?大丈夫?」 これまた急いで筆箱を拾い上げようとする。すると、 「いい自分で拾う」 静かに鋭く言い放たれた。 「それより行かなくていいの待ってるわよきっと」 「でも」 流石に俺が落としたんだから申し訳ない。 「いつか慰謝料でも払ってもらうから。行けば自己中さん」 俺は彼女が嫌いだ、いつも影が薄くて暗い癖に妙に上から目線で話しかけてくる。 「そう、じゃあ」 一刻も早く彼女の元から離れたかった。 そのまま駆け出して校庭へ向かった。 「遅いぞ登城」 「悪い悪い、足止め喰らってさ」 息も絶え絶えに先程までの事情を説明しているとやっぱりかというように仲のいい男子生徒が言った。 「その彼女ってあれだろ、白羽優空(しらはね ゆわ)。あいつ1年の時からあんな感じでずっと友達いないらしいじゃん」 確かに。思わず俺は頷いてしまった。 あんなに性格が悪ければガラの悪い高校ならいじめの対象になっていただろう。 幸い、この高校は人徳に優れており心の綺麗な生徒が沢山いる。 だから俺だってすぐに馴染むことが出来た。 「まあ、そんなことよりよ、もっと面白い話があるんだよ」 突然仲のいい男子生徒が俺の肩を軽く叩いた。 「『見えないはずの鏡』って知ってるか」 急に深刻そうな顔を俺に向けて続けた。
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