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イルミネーションが輝くようになった。
街中で雲や風、渡り鳥、自然の移り変わりによって季節を感じにくくなっても、こうしたイベントによって四季は彩られている。
「さーさーもーとー」
ぼくが信号待ちをしていると、横断歩道の向こうで手をふるやつがいる。
あの黄色いニット帽は、加藤だな。
「偶然!」
「加藤、家こっちのへんだっけ?」
「後輩んとこ、いまからいくんだ、笹本もくる?」
「いかない」
ぼくの即答に、加藤がわらう。
「なんかさ、秋の学内発表でやったイモリの黒焼きが欲しいって言われて」
「そんな反響あるんだ?」
「笹本はいいよなあ、近寄るなオーラがあるから!だからみんなオレんとこくるんだよ、なんか今度おごれ!!」
「ないよ、そんなオーラ、ただ加藤が人懐こいだけだろ、」
加藤は、学部は違うが、大学でぼくが友人と呼べる貴重なひとりだ。
自分で言うのもなんだが、ぼくと仲良くなれるくらいだから、だれとでも仲良しで友だちも多い。
「あるよー、そんな座高の高い自転車乗りやがって」
ロードバイクのことを、座高が高い自転車って、
「なんだそれ、本職だろ、出張調合がんばれ」
「はいよぅ」
そう言って、加藤はぼくが来た道を歩いていく。
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