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口づけからはじまる友情?
そんなものないよなぁ。
でも、脈ありだとおもって違ったら…立ち直れない。
相澤さんの言っていた、「関係を崩すのがこわい」は、そのとおりだ。
翌日、図書館へ寄ってみることにする。
夏季休暇に入ってからは行っていなかった。
久しぶりに山内さんに会えるだろうか。
図書館のエントランスには受付台が出ていて、サオリさんが垂れ幕を貼っていた。
「おはようございます、今日ってなにかあるんですか?」
「笹本くん、おはよう!今日ね、研修会なのよ、でも図書館は開いてるから、どうぞ」
「お忙しそうですね」
「…山内さんなら、実行委員になってて、」
ぼくは一言も山内さんに会いにきたとは言っていないのに、サオリさんはそう言葉を続けた。
「笹本、おはよう!」
サオリさんのエスパーぶりを疑問におもっていると、肩をたたかれる。
隣に並ぶ山内さんは、髪がすこし短くなっていた。
「おはようございます」
肩に手を置いたまま、サオリさんに話しかけるから、ぼくはその場を立ち去れない。
「柳田さん、おれ、データのはいったUSBを部屋のパソコンにさしっぱなしにしてて、これから取りに帰ってきます!」
それを聞いたサオリさんは、
「どうして寝る前に荷物を準備しておかないの!」
と語気を荒げた。
…サオリさん、お母さんだ。
「すみませーん、ちょっと時間もないんで、」
と言って、山内さんが出かけようとすると、館長がやってくる。
「山内くん、流れの最終チェックをしたいんだが、」
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