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絵に描いたようなドタバタだ。
「館長、実は…」
「ぼく、取ってきましょうか?」
山内さんの言葉を遮って、提案していた。
三人の視線が集まる。
「山内さんのお家は知りませんが、教えてもらえたら、行ってきますよ」
「なにか忘れてきたのか?」
館長が山内さんに尋ねる。
「…すみません、きょう流すデータを部屋に忘れてきまして」
館長はため息をつくと、ぼくをみた。
「君、学生だよね?学部はどこ?」
「院で、北村教授の研究室にいます、笹本といいます」
「北村のとこの、そうか、山内くん、どうする、取りに行ってもらう?」
「…笹本、いいのか?」
「はい、あ、でも、自転車で取りに帰れる距離ですか?」
「…車で10分くらい、会が始まるのはあと一時間後なんだけど」
「だいじょうぶです、信号避けれますし、それくらいの距離なら間に合います」
「じゃあ、わたし山内さんのマンション知ってるから、笹本くんに教えますね!」
サオリさんが、館内に急ぐ。
「笹本、ありがとう!これ、鍵!507号室だから!」
そう言うと、山内さんは館長と打ち合わせにいった。
自分で自分にびっくりする。そんなことを言い出すなんて。
言った以上は間に合わせなければ。
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