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それから正気を戻し、待合室へむかう。
幸を待って、ふたりで車に乗った。
幸はだるそうで、でも、その弱っている感じに、終始、どきどきしていた。
だって、いつもなら、「ひとりで生きていけます」みたいな雰囲気だし、こちらが手を差し伸べる隙もないのだ。
「山内さん、なんでうれしそうなんですか」
そわそわしているのがばれた!
「…うれしいわけ、ないし、心配したんだぞ」
「ぼく、電話かけました?」
「電話はもらってないよ、相澤先生が図書館に来て、心配だから見てきてほしいって言われた」
…そうだ、電話なんてもらってない。あてにされてなかったのかな。
まだ、山内さん、だし…
気分が一気に下降した。
「相澤さんが、そぅか、おかげで助かりました」
「…うん、礼なら相澤先生に言ってあげて」
浮かれてばかみたいだ。
もうひとつ、信号を過ぎれば幸の部屋。
マンションの前に車をつける。
「山内さん…」
「…なんでしょう」
「看病してくれないんですか?」
する!したい!!その発想がなかった!
「看病してあげたら、なにかご褒美くれる?」
幸が呆れている。
でも、ここは譲れない。
「おれのこと下の名前で呼んで」
寝言だけじゃなくて。
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