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幸は、瞬きを、ひとつ。
「着替え持ってくるので、ちょっと待っててください」
会話を流しやがった。ってうち?
「うち来るんだ?」
「バイト先のひとが来るかもしれないので、避難します」
「なるほど」
バイトは、スポーツジムだっけ?
幸は自分から話さないし、おれもとくに聞かない。
どう聞いていいのかわからない。
もちろん、気にはなるけど。
聞いたところで、なんで教えないといけないの、とか言われそう…
傷つく!!
言われもしていない言葉に震えていると、
「おまたせ」
と幸が乗り込んできた。
「ようし、じゃあ、看病するぞー!」
「安全運転でお願いします」
「おお!」
夕暮れの中、車を走らせる。
進むごとに街並みが暮れていく。
おれの部屋につく頃には、すっかり暗くなっていた。
駐車場に車を停め、外に出て、その気温差に驚く。
「さむい!」
「…半袖だから」
おれのカーディガンは幸が着ている。
「それ返して、着替え持ってきてるんだろ」
「気に入ったのでください」
「四万円したからだめ、」
マンションまで歩く。
幸は体調が戻ってきたようで、弱々しさはなくなってしまった。
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