秘密事香るティータイム

12/16
前へ
/16ページ
次へ
 今の所、フウは毛糸玉と戯れ、人間には関心が無いらしい。  雨は益々強くなり、会話も途切れた。  和也は、切り出すのは今しか無いと感じていた。  そう、勇気を出して、彼女に気持ちを伝えるのだ。 「いつ切り出すの?」「……」止めておこう。パクリになる。  和也は、躊躇いながら薫に声をかけた。 「薫さん、僕と真剣に付き合って貰えませんか?」  薫は、驚いたように和也を見つめていた。  雨音だけの世界、時が止まったようだった。  薫の表情からは、否とも応とも読み取れない。  固唾を飲んで待ち受ける和也に、薫が出した答えは、保留だった。 「少し考えさせて」  薫が、淋しげに笑う。  その愁いを帯びた感じが、和也の記憶に何時までも残っていた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加