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それ以来、薫は帰って来なかった。
月日が過ぎ、何時しか和也も待ちくたびれ、クリエイターとしての芽も出ず、いよいよ帰郷を考える。
そして、薫との唯一の思い出となってしまったフウを連れて、和也は故郷に帰った。
帰郷以来、地元で就職しなおし、日々の生活に追われ、どんどん普通になっていく。
フウの存在が、楽しかったお茶会を思い出させる事もあるが、月日と言う名の溶剤が、どんどん色褪せさせて行く。
そんなある日、テレビの画面を通して、和也は彼女と再会した。
姫琴 薫は、ソニアと言う芸名で活動していたらしい。
後で知った情報によると、メジャーになるきっかけは、B級アイドルが社交ダンスに挑戦すると言うテレビ企画だそうだ。
そう言えば、令嬢の社交界デビューを表す単語、デビュタントは、フランス語が語源だと、お茶会で薫が言っていたのを、和也は急に思い出す。
そして、和也は、薫が姿を消した理由も知る事になる。
それは、生放送中の事故だった。
ロケ地を取材中の薫を、強風に煽られた枝が直撃。
幸い、怪我はなかったが、金髪のカツラを持って行かれ、短髪の黒髪が露出。
お茶の間に衝撃を与えた。
そう、薫は男だったのだ。
和也は、何時だったか、お茶会の時に、オカマに否定的な意見を述べた事があった。
その時、薫はどんな気持ちで聞いていたのだろう?
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