秘密事香るティータイム

14/16
前へ
/16ページ
次へ
 それ以来、薫は帰って来なかった。  月日が過ぎ、何時しか和也も待ちくたびれ、クリエイターとしての芽も出ず、いよいよ帰郷を考える。  そして、薫との唯一の思い出となってしまったフウを連れて、和也は故郷に帰った。  帰郷以来、地元で就職しなおし、日々の生活に追われ、どんどん普通になっていく。  フウの存在が、楽しかったお茶会を思い出させる事もあるが、月日と言う名の溶剤が、どんどん色褪せさせて行く。  そんなある日、テレビの画面を通して、和也は彼女と再会した。  姫琴 薫は、ソニアと言う芸名で活動していたらしい。  後で知った情報によると、メジャーになるきっかけは、B級アイドルが社交ダンスに挑戦すると言うテレビ企画だそうだ。  そう言えば、令嬢の社交界デビューを表す単語、デビュタントは、フランス語が語源だと、お茶会で薫が言っていたのを、和也は急に思い出す。  そして、和也は、薫が姿を消した理由も知る事になる。  それは、生放送中の事故だった。  ロケ地を取材中の薫を、強風に煽られた枝が直撃。  幸い、怪我はなかったが、金髪のカツラを持って行かれ、短髪の黒髪が露出。  お茶の間に衝撃を与えた。  そう、薫は男だったのだ。  和也は、何時だったか、お茶会の時に、オカマに否定的な意見を述べた事があった。  その時、薫はどんな気持ちで聞いていたのだろう?  image=488085676.jpg
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加