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それは、ギターの爪弾きに合わせた歌だった。
まるで、男の子みたいな掠れた声で聴こえて来るメロディーは、テンポはスローなのだが、歌詞が日本語なのか外国語なのか解らない感じで、全く自由に口ずさんでいた。
和也と猫は、仲良く階下を覗き込む。
そこには、現実的では無い程の美少女が、庭とも呼べない空間にある長椅子に寝そべって、ギターを相棒に歌っていた。
彼女は、何処か遠い目をして、夢とも現とも言えない世界を旅しているようだった。
手足の長いモデル並みの美少女が、ボロアパートに居るだけでファンタジーなので、和也自身、現実に起こっている出来事なのか判断がつかなかった。
和也は、目が離せない状態に陥る。
その時、美少女が和也と猫に気が付いた。
それもその筈、レーザー光線並みの視線が送られているのだから、いくら野性の勘が衰えた現代人でも、いい加減気づく。
男子と猫がベランダの手摺からちょこんと顔を覗かせているのを見て、美少女は微笑む。
最初の反応としては驚きそうだが、彼女は物に動じないタイプかも知れない。
そして、最初の一言は、猫に関する事だった。
「フウ、そこに居たの」
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