第1章

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「ただいまぁー」 「お帰りなさい、ジャクリーン。早かったわねぇ? ってどうしたの?」  そう言ってジャクリーンを出迎えたのはシャーロットであり、右足を引き摺るジャクリーンを見て驚きの表情を浮かべる。 「あー……えっと……盛大に捻った?」 「なんて無茶をするの! 手当てするわよ」  苦笑を浮かべるジャクリーンを叱咤し、シャーロットはジャクリーンを無理やりお姫様だっこで抱え上げた。 「ちょ、歩けるって!」 「問答無用!」  遠巻きに「店長って力持ちねぇ」と漏らす店員や客の言葉を聞きながら、ジャクリーンは赤面するもののシャーロットは有無を言わさずにそのままジャクリーンの部屋へと運ぶ。 「ジャクリーン……とっても言いにくいんだけど、予告状……出しちゃったのよ」  部屋に入ってすぐにジャクリーンをベッドに座らせ、シャーロットは「困ったわぁ」と呟いた。 「はぁ!?」 「だから焦ってるんじゃないの。どうしても無理なら私が行くけれど……」 「焦ってるんじゃなくて楽しんでるだろ? ……俺が行く」  心配するような事を言いながら全く隠すことなくニヤニヤした表情のシャーロットに、ジャクリーンは不機嫌そうにカツラを投げつける。 「全く……口も態度も悪いわねぇ……そう言うんだったらさっさと足出して」  ジャクリーンが投げたカツラを空中で器用に掴み、シャーロットは棚に片付ける。部屋の隅に置かれた救急箱から湿布や包帯などを取り出すと、慣れた手つきで手当てを始めた。 「今日も夜?」 「そ。狙うのは西外れのモメンゴリー卿の真紅の首飾り。見取図とかは何時も通りヤス子が調べてる。すぐに呼んでくるわ」  シャーロットは手早く手当てを終えると、仕上げと言わんばかりに右足首をわざと叩いてみせる。 「了ー解」  ジャクリーンは痛みに表情を歪めたが、直ぐに楽しげに笑った。
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