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屋根裏部屋の天窓から光が注がれる。タオル生地のブランケットから覗く白い脚が虚空を蹴り、寝返りと共に宙を舞った。深い眠りに包まれたまま、その脚の持ち主はムニャムニャと言葉にならない寝言を漏らす。
「ジャクリーン、起きたぁー? ジャックリーン?」
遥か遠く現つから呼ぶ声が響いてきた。その声が自分を読んでいること、段々と近づいてくることに気付き、夢心地から飛び起きるとジャクリーンは慌てて周囲を見渡す。
鏡に写った姿を確認し、乱れた髪を整え、脱ぎ捨てた服を拾い上げて洗濯籠に投げ入れた。
その瞬間、ドアを叩く音が響く。その宣告に身体を少しばかり強張らせたものの、直ぐに新しく洗濯したばかりの洋服を引っ張り出して袖を通した。
「ジャクリーン、入るわよぉ?」
「ちょ、ちょっと待って!」
「また寝坊したのね……いーい? 私は一度だって、寝坊なんてしなかったのよ」
ドア越しに会話をしている間にわたわたしながらジャクリーンは身支度を整える。長い髪を三つ編みに結い、洋服の上から白いエプロンを着た。
それと同時にドアが開かれる。ジャクリーンと同じ格好の女性らしき人物が入ってきた。心なしか顔の造形もジャクリーンに似ている。
「おはようございます。シャーロット店長」
精一杯の笑顔を浮かべてジャクリーンは頭を下げた。部屋に入ってきた人物――シャーロットは少し眉を吊り上げて怒っていた様子だったが、直ぐに顔を綻ばせる。
「まぁいいわ、ジャクリーン。ハロウィンの怪人は昨晩も大手柄だったようね」
「……引退するのはまだ早かったんじゃないですか?」
「あらぁ、家業を継ぎたいって言い出したのはアナタよ。ま、有無を言わさず継がせるつもりだったけど」
シャーロットは微笑みを崩さないまま、ベッドに腰かけてジッとジャクリーンを見つめる。
「……ですよねぇ」
「ジャクリーン。ズレてるわ。リボンとカツラ」
苦笑するジャクリーンを尻目に、シャーロットは胸元の大きなリボンと髪を指差した。
「えぇ!? ウッソ! うっわ、ホントだ」
シャーロットに指摘され、慌てて鏡を覗く。
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