第1章

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「あーぁ……私と違っておっちょこちょいなのよねぇ……お母さん似だわ」 「……以後、キヲツケマス……」 「お父さん、毎日心配なのよ。三代続いたハロウィンの怪人がアナタで終わりになるんじゃないかって」  呆れた様子のシャーロットは、頬に手を当てて大きくため息を漏らす。 「……一つ聞いていい? ずっと思ったんだけど、なんで女装しなきゃなんないの?」 「ジャクリーン、男言葉になってるわ。気を付けなさい……盗みついでにわざわざウチの店のお菓子をばら蒔いてるのよ? 疑われないために決まってるじゃない。シトルイユには男性従業員がいない! か弱い女性だけが切り盛りする店! つまりはシトルイユにハロウィンの怪人なんていない! ……という図式よ」  おもむろに立ち上がり、大げさに身振り手振りを加えながら言い切るシャーロット。ジャクリーンは大きくため息を漏らして頭を抱えた。 「わざわざ貴金属を盗むのは?」 「依頼よ。私たちはお客様が望む品なら何だって盗むの。他人のものでもね。お分かり?」 「……というか盗みが本業なら、菓子店を畳んでお菓子をばら蒔くのを止めれば……」 「だまらっしゃい! シトルイユは表家業! ハロウィンの怪人は裏家業! お祖父ちゃんの代からの慣わしに文句はたれない!」  口調は女性のままだが興奮しているからなのか低い男声で凄むシャーロットに、ジャクリーンは僅かばかり苦笑する。 「わかりました、ちゃんとやりますよ。ヘマはしません」 「そ、わかったならいいの。というわけで、隣に越してきたニコラス君の相手をしてくれる?」  ジャクリーンの返事を聞き、満面の笑みを浮かべるとシャーロットは裏声で女性らしく振る舞う。ニコラスの名を聞いたジャクリーンは身体を強張らせ、力無く笑い声を漏らした。 「ちょ、なんで! なんでわざわざハロウィンの怪人の正体を暴くとかのたまってる奴なんかの! 相手をしなきゃ……いけないの?!」  ジャクリーンは叫び声を上げるものの、シャーロットの鋭く冷ややかな視線を受けて無理矢理、女の子らしい言葉に直しながら憤りを表す。
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