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「やはりそうですよね。わかりました。可能性を潰していきましょう」
「……可能性?」
「まずはこれを食べてください」
そう言ってニコラスに手渡されたのは両手いっぱいのお菓子だった。
「これは……?」
何故シトルイユの菓子を渡されたのか図りかねて、首を傾げているとニコラスがおもむろにジャクリーンの手中からお菓子を取り上げて包み紙を開くと口の中へと運ぶ。
モゴモゴと菓子を食べながら、ジャクリーンは顔を耳まで真っ赤に染めてニコラスを見た。しかしニコラスは淡々とした表情でジャクリーンを観察している。
「私は余り食べないので分からないんですが、これがシトルイユの味ならシトルイユの顧客を調べ、異なるようならシトルイユの店とは別の店を回るつもりなんです」
「……なるほど……」
口に入れられた菓子を食べ終え、感心したように頷いたがすぐに首を振ってどう答えるべきか考え込んだ。
「……流石にシトルイユの跡継ぎでもわかりませんか?」
「す、すみません……」
ジャクリーンが悩んでいる間に結論を出され、安堵しつつも表情を読まれないように俯く。
「仕方ありません。まずはシトルイユ以外の店を回りましょう。手伝ってもらっても?」
「ふぇ? だ、大丈夫です。手伝います」
俯いている隙をつかれ、ニコラスに頭を撫でられたジャクリーンは狼狽えを露にしつつも何度も頷いた。
「あ、お菓子……邪魔ですよね。それ、現場にあった証拠品ですけどどうぞ」
「でも……」
「移動しにくいでしょうから、これ使ってください」
そう言って渡された白い紙袋にジャクリーンがお菓子を入れると、ニコラスは僅かに微笑みを浮かべる。
「それではジャクリーン。まずはこっちです」
何故微笑まれたのかわからずにジャクリーンが首を傾げていると、ニコラスが咳払いをして最初に向かう道を示した。二人はその方向に向かって歩き出す。
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