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街は夏の暑さを忘れ、太陽が熱量のある光を放っても冷たい風が吹き抜ける。役目を終えた木の葉は色づき、枯れ果てて風に吹かれ地面へと落ちていった。
「ニコラスさんはどうしてハロウィンの怪人を追ってるんですか?」
「あぁ、私の祖父と父が警察官なんです。父がいつまでも捕まえられないので、次は私の番と言うわけですね」
「……そ、そうなんですか」
ふと気になった事だったが、ジャクリーンはすぐに聞いた事を後悔する。代々続く因縁の相手を前に、何をしているのだろうと自問自答した。
「あ、理由はもう一つあるんですよ? 幼い頃にハロウィンの怪人を捕まえたら、結婚すると幼なじみと約束したんです」
少し気恥ずかしそうに話すニコラスを盗み見て、ジャクリーンは眉間に皺を寄せる。捕まりたくはないが、そうするとニコラスは約束を果たせない。
ニコラスはともかく、その相手の子には申し訳ないなと心の中で謝った。
「あ、ちょっと待ってください。ジャクリーン」
そう声をかけられ、ジャクリーンは足を止めて振り返る。ニコラスが風に舞うジャクリーンの髪を掴み、髪に絡み付いた枯れ葉を取った。そしてそのまま髪に口づける。
「ちょっ……!?」
「綺麗な色の髪ですね」
そう言ってすぐに髪を放すと満面の笑みを浮かべた。ジャクリーンが驚愕の表情で口をパクパクと動かすと、ニコラスは困ったようなため息と微笑みを漏らして再び歩き出す。
「何故、口説き始めたし……!」
ジャクリーンがニコラスに聞こえないように小さく吐き捨てると、ぶんぶんと首を振ってニコラスの後を追った。
いたずらに枯れ葉を舞い散らせる風が、二人の間を吹き抜けていく。
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