第1章

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 なんだかんだと世間話を交えながらジャクリーンとニコラスは街の菓子店を巡る。途中、ジャクリーンは「これって捜査じゃなくてデートじゃね?」と考え戦慄したが、そんなことを口に出せる訳もなく複雑な面持ちで短くため息を漏らした。 「もしかして疲れてしまいましたか?」  ジャクリーンの表情が冴えないことに気付いたニコラスが心配そうに覗き込んでくる。顔を近づけられ、驚きと共にジャクリーンは一歩下がった。 「ふわっ、い……いや大丈夫です! 次! 次行きましょう!」 「そうですか? 歩きっぱなしに食べ続けですから、どこかで休憩しましょう」 「いやいや……ライバル店の食べ歩きも勉強になりますし、本当に大丈夫ですか、ら……!」  端から見たら痴話喧嘩にも捉えられかねないやり取りの会話を交わしている間に、ジャクリーンは転がっていくゴムボールを追いかけて道路に向かっていく子供に気付いた。 「危ない!」  車がその子供に迫っていくのを捉え、ジャクリーンは全速力で子供の所まで走ると寸での所で子供を抱えて助けることに成功する。車にぶつかったゴムボールが空を飛んだ。 「大丈夫? 怪我は?」 「……大丈夫」  子供は泣きそうな表情で頷く。ジャクリーンが子供の視線に合わせてしゃがみこみ笑顔で頭を撫でると、泣き出してしまった。 「二人とも無事で何よりです。車には気をつけるんですよ?」  飛んでいったゴムボールを拾ってきたのだろう。ニコラスがゴムボールを子供に差し出すと、子供は大きく頷いてゴムボールを受け取った。 「おねーちゃんもおにーちゃんもありがとう」  自分で涙を拭い、頭を下げると子供はそのまま走り去る。 「ジャクリーン。大丈夫ですか?」 「あ、これくらい平気で……」  ニコラスに手を差し出され、ジャクリーンはその手をとって立ち上がるが右足に痛みを感じてバランスを崩してしまった。そのままニコラスの手中に飛び込み、抱き合う形となり赤面する。
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