回想

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正直、その時は野球が楽しくて彼女どころではなかった。 最後の地区大会も間近でもあり、野球に集中したいこともあった…下手だけど。 いや、下手だから頑張るしかない。 しかし、部活が終るとそわそわ… 正門の坂の下で待っててくれるが、周りに人がいると話しかけてくることはまずない。 皆がいなくなってからようやく近寄ってくるか、痺れを切らして帰るかである。 お互いに運動部に所属(彼女はテニス部)しているためこの時期は最後の調整で多少は帰りが早い。そのため、一緒に帰るのが多かった気がする。 だが、一緒に帰っても相変わらずである。ちょっと話して沈黙が続く。端から見たら仲が良いのか悪いのか良く解らない。解散場所には他のペアももちろんいる。皆考えが同じ(と、言うか帰り道が少ない)なので、必然と集まってくる。そこで、他の友達と話している方が明かに楽しそうだった。家に向かうときはお互いに「バイバイ」とは言う。 そんなこんなで時間が過ぎついに大会の日が来た。 野球部はもちろん初戦勝ち。 俺も途中出場した。 しかし、テニス部は…負けてしまった。 帰りは試合の都合上一緒に帰れなかったが、次の日は話をした。 「残念だったね。しかたないよ、勝負には勝ち負けあるからさ…」 「うん…ありがとう。次の試合も頑張ってね。」 「まかせろ!出れるか解らないけど、地区大会は優勝できるだろうから!」 正直、同じ地区なら相性がわるいチームが1つあるが、その他には負ける気がしなかった。 2回戦、3回戦も順調に勝ち進んだ。 その頃には野球部以外は負けてしまっていた。 結局地区大会は優勝。次は県南の大会である。 大会が始まる頃には夏休みに入っていた。 初戦の前夜…家の電話がなった。 親がとると…俺に電話とのこと。 こんな時間に誰だろうと思った。 「はーい。代わりました」 「…いよいよ明日だね。明日は行けないから…頑張ってね。」 「そんなこと言うのにわざわざ電話してくれたんか!ありがとう。」 その後は相変わら沈黙が続いた。 「じゃ、もう寝るね。勝ってよ。」 「ありがとう。良い報告できるように頑張るよ!じゃ、おやすみ!」 電話を切った。 この頃にはまだ携帯電話を持っていないため、直接家にかけるしかなかった?もちろん相手の親が出る確率が高い。しかし、気にはしてられない。 俺はそのままベッドに向かい、眠った。
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